定款変更のやり方

医療法改正による医療法人の定款変更手続
ここでは、一例として、埼玉県を所管庁とする小規模な医療法人(いわゆる一人医師医療法人)が必要最小限の手続きをする場合について説明します。

「なぜ、埼玉県か?」

というと、私の事務所のお客様で、一番最初に順番がきたのが、埼玉県管轄の医療法人さんだったからです。

実際に、手続を行った事例が、一番参考になると思ったからです。



※ご注意------
提出書類、書類の記載方法、提出方法等は、所管庁によって異なります。必ず、所管庁の方式を確認し、それに従って手続きをして下さい。

なお、このサイトが提供するやり方で手続をし、サイト利用者に損害が発生した場合でも、当サイト及び行政書士海老澤祥司は一切の責任を負いません。

※必ず、所轄庁にご確認下さい※

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では、早速、手続をやってしまいましょう。

どうせやらなければならないのですから、早めに準備しておきたいですね。

[1]資料を手元に準備する
[2]法人の現行の「定款」を用意する

[3]定款の変更すべき部分をチェックする

[4]「新旧条文対照表」を作る

[5]「医療法人定款変更認可申請書」を作る

[6]「臨時社員総会議事録」を作る

[7]書類に押印する

[8]提出する形式に整える

[9]所管の保健所に提出する



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[1]資料を手元に準備する

提出書類リスト、書類の様式、記載例を手元に準備します。埼玉県の場合、ホームページに掲載されていますので、ダウンロードして下さい。

[2]法人の現行の「定款」を用意する

あなたの法人の定款を用意して下さい。定款は、法人設立の時に作られているのですが、その後、変更している場合もあります。必ず、最新の定款を用意して下さい。


[3]定款の変更すべき部分をチェックする

医療法人の定款は、もともと所管庁の指導を受け、モデル定款を参考に作られているので、あまり特殊なものはないはずです。しかし、法人の意向に任されている部分もあるので、細かい内容や条文のナンバー等、法人ごとに違ってきます。ご自身で、変更すべき部分と内容をチェックする必要があります。

@法人の定款で、対象となる条文を探し出す

埼玉県のホームページからダウンロードした「医療法人○○会定款新旧条文対照表(作成例)」を見て下さい。そこに、変更しなければならない内容が全て書かれています。書いてある条文のナンバーと内容を参考に、あなたの法人の定款で該当する条文を探して下さい。条文のナンバーが「作成例」と同じでない場合、たいていはそのナンバーの付近にありますので、探し出して下さい。

A変更すべき内容を確認する

一言一句よく読んで確認して下さい。あなたの法人の条文の内容が、「作成例」の旧条文と違っていることもあります。あなたの申請書類には、当然、あなたの法人の条文からの変更を書きます。ですから、「作成例」どおりにそのまま丸写しすれば良い、というわけではありません。法人の条文がもともと改正後の内容に沿っていて、変更の必要がない場合もあります。


[4]「新旧条文対照表」を作る

今回の手続きの要となる書類です。十分に確認しながら作って下さい。

[3]で確認した変更部分を、様式に書込んでいきます。実際には、埼玉県が発表している「作成例」のワードファイルを下敷きに、必要に応じて修正していく、という方法がやりやすいと思います。

ここに一例を挙げますので、参考にして下さい。

(例)医療法人A会の場合(所管庁は埼玉県)


埼玉県の「医療法人○○会定款新旧条文対照表(作成例)」には、冒頭の条文について次のように書いてあります。(新旧条文中の下線は、「ここを変える」という部分を示しています。)


<旧条文>

第6条 本社団の社員になろうとするものは、社員総会の承認を得なければならない。

<新条文>

第6条 本社団の社員になろうとする者は、社員総会の承認を得なければならない。

2 本社団は、社員名簿を備え置き、社員の変更があるごとに必要な変更を加えなければならない。


A会の定款で第6条付近を探したところ、該当する条文は、A会の定款では第5条でした。次のように書いてありました。


第5条 本社団の社員になろうとする者は、社員総会の承認を得なければならない。


この場合、A会の「新旧条文対照表」には、次のように書きます。


<旧条文>

第5条 本社団の社員になろうとする者は、社員総会の承認を得なければならない。


<新条文>

第5条 本社団の社員になろうとする者は、社員総会の承認を得なければならない。

2 本社団は、社員名簿を備え置き、社員の変更があるごとに必要な変更を加えなければならない。


A会のこの条文の変更作業で注意しなければならなかった点は、こちらです。

・条文のナンバーが「作成例」と違う →A会の条文ナンバーで書く

・第1項で変更しなければならないはずの「者」という部分は、元々クリアしていた →A会の定款では変更なしなので、この部分の下線をなくす

・第2項は、A会の定款にもなかった →第2項は、「作成例」どおりに追加する

この要領で、変更すべき条文を、一つ一つ丹念に、書類に書き込んでいって下さい。

[5]「医療法人定款変更認可申請書」を作る

「医療法人定款変更認可申請書」は、埼玉県発表の記載例を参考にして簡単に書けると思います。「変更しようとする定款の条項」の欄には、[4]で作成した、あなたの法人の「新旧条文対照表」上の条文のナンバーを書いて下さい。

[6]「臨時社員総会議事録」を作る

埼玉県発表の記載例を利用して作ると良いでしょう。日時、場所、出席社員氏名などを書き込めば良いようになっています。末尾の原本証明も、忘れずに付けて下さい。

*ここでいう「社員」とは、診療所等で働いている人ではありません。医療法人の構成員であり、議決権を持っている「社員」のことです。法人は社員名簿を備えていることと思いますが、これが見当たらず社員が確認できない場合は、念のため、直近の社員総会議事録を見るなどして確認して下さい。

[7]書類に押印する

それぞれ、指定の場所に押印して下さい。全ての書類に、捨印も忘れずに押印して下さい。

正本1部、副本2部を提出しますので、全部で3部分の書類を準備し、押印して下さい。

認可が下りるまでの法人用控えがほしい場合は、もう1部作っておきましょう。法人用控えは、押印済みの正本をコピーして作るのが良いと思います。

[8]提出する形式に整える

書類は全て所定の順番にまとめ、全体を袋とじにします。順番は、次のとおりです。

@医療法人定款変更認可申請書

A新旧条文対照表

B定款(変更前のもの)

C臨時社員総会議事録

今回の場合、同じもの3冊(+法人用控えとしてのコピー版1冊)を作ることになります。袋とじしてできた冊子の表紙と裏表紙に押印する割印も、忘れずに押印して下さい。

[9]所管の保健所に提出する

提出先は、埼玉県庁ではありません。主たる事務所を所管する保健所に提出します。予約が必要な保健所もありますので、所管の保健所に事前に確認した方が良いと思います。

正・副合わせて3冊を提出します。法人用控えも持って行って、受付印を押してもらうと良いでしょう。

今回、申請から1〜2ヵ月ほどで認可が下りるようです。認可が下りると、所管庁から連絡がきます。法人は、認可書を受け取り、これで手続き終了となります。

変更した内容は、認可が下りてはじめて効力を持ちます。

医療法人の取り扱いについては、所管庁の指導による違いが多く見られます。今回の定款変更手続きも、例外ではありません。

例えば、東京都では、まず仮申請(押印なしで1部ずつ書類を提出し、チェックを受ける)してから、本申請(押印したものを2部提出。法人用控がほしい場合は+1部提出)をします。添付書類として、「新定款の案文」、「医療法人の概要」、「法人登記の全部事項証明書」等も必要です。指導されている変更の内容も一部、埼玉県とは違っています。ご注意下さい。




今回の医療法改正では、既存の医療法人の定款変更について、「平成20年3月31日までに変更しなければならないもの」と、「経過措置として、当面は変更しなくても良いもの」を定めています。

その内容は、厚生労働省のホームページ上でも確認することができます。定款の変更や医療法人のあり方そのものについてより深く考えたい方は、ご覧になると良いと思います。



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